下組
組印は左下向きの「雀」、5反大幟の旗印は「三番」、例大祭には当該雀踊の他に獅子舞も
奉納しています。
遥か昔、薗祭りと呼ばれていた頃に、八幡宮の直系の氏子組として薗田、新薗川、下野、新町、
土手の記述があり、土手組の時代には広い領域があったようです。 後に村の合併、神社の
合祀などを背景に、上記の氏子組の統合・割譲を経て現在の上組、中組、下組になりました。
下組はその所在から「茶免」とも呼び、参加氏子9組の中で現在世帯数や領域が一番少ない
組です。そのため小竹八幡神社の秋季例大祭において余興の大道具 (四ツ太鼓) の参加は
むしろ遅い方でした。
大道具を出すには大勢の若衆を必要としますが、過去には
若衆の人員不足により大道具を出せない時期もありました。
しかしながら世帯数や領域が一番少ない半面まとまりは良く、
他の氏子組以上の情熱をもって「祭の美学」を追い求めて、
御坊市及び和歌山県の無形民俗文化財に指定された伝統を
継承しつつ奉納を続けていきます。
中央下組の傘鉾 |
屋台を先導する四面額 |
宮入式開始直後の5反幟差し |
芝内を周回し境内に入ろうとする屋台 |
鳥居越しで神殿に印を向け「サイテクリョー」 |
若連行事参加中の四ツ太鼓 |
宮入式終了直前の屋台と四ツ太鼓 |
鳥居前で屋台・幟・四ツ太鼓が最後の共演 |
下組の領域
祭礼の氏子組に対して町内会等の組織は本来、全く関係はありませんが、分り易く
伝えたい為に町内会を交えて説明しますと、他の氏子組は複数の町内会を持つ程の、
広さと世帯があります。
しかし下組の世帯・領域は一つの町内会規模の大きさでしかありません。
それだけ小さい世帯という事ですが、言い方を代えますと氏子組の中で下組は、
たった一つの町内会の規模で、例大祭の氏子組の式として遂行し、数百年に渡り
現在まで伝統を引き継いで来ています。
つまり、そこが逆に下組の誇りとなって、情熱の源となっている訳です。
この区域(茶免)は日高別院から小竹八幡神社に至る御坊市の「寺内町観光」の
エリアの一つでもあります。
下組の「祭の美学」
10月5日本宮で9組に割り充てられた宮入式の時間は各組1時間になっています。
与えられた持ち時間60分を超えることなく、また余すことなく式を終了するいわゆる
式時間58分を上品(じょうぼん)として奉納し、あるべき姿等を話し合い、目標として
常に下組の「祭の美学」を追求しています。
10月5日本宮 第三番下組宮入
「只今、濵之瀬組の宮入が終わりましたので、どうぞお入り下さい。」
午後5時頃、式を終了した宮入第2番の濵之瀬組行司から八幡宮の芝前で待機している
下組行司に挨拶と報告がされます。
この挨拶と報告を受けた後に下組の行司は自組の若衆に宮入開始の指示を出します。
芝前にて逸る気持ちを抑え、待ち望む下組の幟の若衆達が、行司の指揮の下に芝の中に
颯爽と走りこみ、勇壮に幟差しが開始されます。これにより、下組の宮入式が始まります。
幟
幟は氏子組の象徴ともいえる重要な祭礼道具で、何はなくとも幟があれば、祭礼の式に参加
する事ができます。
過去には一時期大道具を出せず、幟と屋台だけで祭礼に参加したつらい時期もありました。
10月1日午前0時には各組の各々の境界等に固定された幟が林立して上がり、御坊の町は
祭り到来の知らせに心踊ります。
下組の幟は、5反大幟が「三番」、3反幟は「御祭礼」・「御祭儀」・「茶免」、2反幟は「御祭儀」・
「御祭礼」と染められています。
獅子舞
当祭礼に奉納される獅子舞は二人で舞います。
また獅子には雄と雌がありますが、下組の獅子は雌の獅子舞になります。
鳴り物としては、デッツクと呼ぶ締め太鼓で調子を取り、主旋律の笛に合わせて大太鼓が
強弱や調子を引き締めるアクセントを入れて打ち込み、舞う獅子を誘導します。
山奥から深い谷間の狭い道を走り出て広い野原に出た獅子が、作物を荒らしながら蝶や
花に戯れて遊ぶ。やがて眠くなった獅子は次第に周囲の様子をうかがいながら居眠りを
始める。そのうち眠り込んだ獅子は猟師に撃たれて手負いとなり暴れまわる。しかし神に
いさめられおとなしくなり、やがて人・獅子ともに平安を喜ぶといったストーリーであると
されています。
周囲を廻る道中 |
中央にて曲と舞いが変わります。 |
鳴り物は6穴の横笛と大小の太鼓です。 |
四ツ太鼓
御坊祭が勇壮な祭りと評される基となっているのがこの大道具です。
隈取りをした乗り子が音頭と囃子声に合わせ太鼓を叩く。大勢の若衆が息を合せ四ツ太鼓の
枠を高く差し上げる。囃子声に合わせて勢いよく揺すり上げ、四ツ太鼓の天幕をはためかせる。
囃子声が止むと同時に「ピタリ」と揺すりを静止する。再び囃子声に合せ激しく揺すり上げる。
こういった光景は御坊祭の醍醐味というべきでしょう。
しかしこの四ツ太鼓、当祭礼での位置づけは余興の道具なのです。
宮入式を終えて(式後の式)
持ち時間の内に式を済ませ宮の芝を出る頃はすっかり日も落ち、下組の四ツ太鼓の太鼓は
伊勢音頭にのせ、弓張り提灯や高張り提灯に灯された明かりのもと、哀愁を漂わせながら
小竹八幡宮を後にします。
式中に日没を迎えるという時間的なタイミングと視覚的な演出効果は第三番下組に偶然にも
天より授かった心打つ情景です。
式の終りが近づき幟・屋台・四ツ太鼓が三つ巴で交える頃には、秋の夕暮れが釣瓶落としの
ごとく、周囲の雑踏を見る見るうちに闇に包み込み、知らぬ間に点灯していた照明灯の光に
気づく頃、いよいよ下組の宮入式も終りに。
式の終了時間になると、小竹八幡宮に別れを告げ、引き際を綺麗に宮の芝を後にして、
下組行司が芝前で待機中の第4番紀小竹組行司に、下組の式の終了の挨拶と報告をします。
四ツ太鼓はそのまま押し続け、地元ギャラリーの待つ茶免まで戻ります。
しかし、ここで四ツ太鼓を下せば最後、終了を意味します。老いも若きも最後の最後の力が
尽きて果てるまで四ツ太鼓を上げ続けます。
そして、いつしか労をねぎらう号令で四ツ太鼓の「雀の天幕」が外され、式後の式は終了し、
下組の祭が終わります。